愛読者の楯 明貴です。
3.11から半年経っての10月号。表紙は町工場の青年。たくましい腕が印象的。働くことの喜びや自分の存在への誇りを感じるようないい表情です。いつも子どもや動物の写真が表紙を飾るDAYSでは珍しいチョイスです。後述する町工場の記事を読むとわかると思いますが、閉塞感のある今の日本が立ち戻るべき場所を示唆しているような表紙での始まりです。
特集は「「放射能」どう測る?」
この話題が特集にくるような今の日本の現状であった、ということが最初の驚きでした。
テレビや新聞からは放射能の深刻さを伝える場面が減り、原発なしで夏を乗り切ったことに多くの国民は安堵している今なお、市民が放射能を測定する必要があるという現実に愕然とします。
自分自身は購入しようと思ったことがないのですが、たくさんの方が安心に対する対価を払っていることに刺激を受けつつも、購入した方の背景、なぜ決して安価でない測定器購入を決断したのか、私のような普通の市民の生活に必要なのか、特別な背景があるから必要なのかも知りたいなと思いました。
普通の市民である私は、東北の復興を願いながらも流通している東北産の野菜、米を避けて生活しています。食べてもいいのか悪いのか、自分の住む地の水道は本当に安全なのか、どんな生活をしたら内部被曝をさけられるのか、未来の子どもに放射能をバトンしないように、女性が自分の体を守るために必要な情報が、次回以降届けていただけたらうれしいです。でもこれは現段階では、あらゆることが明言できないから出てこないでしょう。
広河さんは過去にチェルノブイリの話、日本の原発の話をしながら、放射能について人類が持つ情報や対策があまりに不透明である、だからこそ安易に原発に頼ってはいけない、放射能が飛散してからその恐ろしさを知っては遅いと、いつもいつも発信をされてきました。そのことを悔しさとともに思い返しました。とても興味深い特集なので、引き続きいろいろな角度から切り込んでいただけたらなと思いました。貴重な情報をありがとうございます。
9月21日19時から文京シビックホールで「これから起こる、本当のこと」という広河さんらのトークイベントがあります。きっとこの記事に関連するような発信があるはずです。私も自分と家族を守る術を学ぶために参加しようと思います。読者以外の方にも是非お知らせください! 今こそ市民が強く、賢くあるべきですよね!
そして旬な作家、池井戸さんと実際の日本の町工場の写真を組み合わせたエッセイ。これはとてもおもしろかったです! 直木賞作家が「日本ってこんなにかっこいい面もあるんだよ!」と激励しているようなあったかいエッセイと、広河さんと佐藤さんが撮る、凛とした姿の町工場の人びとの姿が、今後日本が改めて向かうべき先を示唆してくれているように感じ、とても心温まる時間でした。
連載3回目を迎えた「チェルノブイリ謎の雨」。私的には大大スクープのような記事なのですが、他の読者のみなさんはどんな思いで読まれているのでしょうか。
“人工雨”という映画の中のような技術が現実に可能なんですね。放射能の雨が、川や水道水を汚染し、土壌の汚染も拡大させるのならば、雨を降らせる雲を追い払えばいい。放射能を含む雲が都市に到達する前に雨を降らせばいい。そうした操作も人間には可能だということが、噂なのか真実なのか未だ不明ですが、広河さんの記事を読む限り限りなく真実に近いことを実感します。
しかし天気まで人間が操作しようとすること自体に疑問も感じます。読み終えとても複雑な気持ちになりました。人間とはいったい何なのか……。そうまでして私たちは生き残っていい生き物なのか……。答えに至らない思いですが、次回を読んでまた考えたいと思います。次回は最終回です。実際に人工雨作戦の実行部隊にいた人のインタビュー中心とのこと。何でこんな取材が可能なんだろうと、毎回びっくりします。とにかく非常に楽しみです!
江成常夫さんの写真は、いつもアーティスティックで胸に迫ってくるような色が好きです。特に赤が深く。濃く、印象的です。とても迫力のある記事でした。
太平洋戦争の激戦区、ガダルカナル、パプアニューギニア、フィリピンのルソン島・・・“鬼哭(キコク・浮かばれぬ亡霊が恨めしさに泣く事)の島”と表現し、太平洋戦争から70年たってもなお遺骨が野ざらしにされ、多くの戦死者の魂が成仏できずに無念を抱きながらさまよっていると言われる地を取材されています。その過去の声に今の自分たちは何を学べているのか、現代に生きる人間への警告として写真が代弁しているようです。
今、そこで何かが起きている写真を撮るよりも、過去に何かがあった地で深い悲しみや憤りを写し出す事は本当に難しいことだと思います。江成さんの深い洞察力と表現力だから撮影できた写真が、それをしっかりと伝えてくれています。さすがだ!と唸ってしまいました。
作品を見たあと、「私の取材機材」で江成さんが紹介されています。キャリア50年の江成さんの歩んだ道を機材と一緒に知ることで、前述の眼差しに納得しました。
80回目の連載を迎える「営みの地球」でも、今月は違った角度から地球の雄大さを伝えています。人間がまだ自然界と謙虚に向き合っていた頃、自然がしっかりと人間を守ってくれていた頃を見事に表現しています。人間が今後考え続けなければならないことを宿題として読者に残し、今月号は終わります。
「人間としていかに生きるか」をいつも教えてくれるDAYS JAPANが自分のそばにあることをいつも感謝しながら、感想とさせて頂きます。
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測定器特集は、買いたいけれどどこで何を買ったらいいかわからない、
という声を多く聞いたために、購入して測ってみた人の体験アンケートを前面に出して、
そしてNHKの衝撃的なETV特集で汚染地図を作っていく様子を報告された、
木村さんと良心的な業者の立場から原さんのお考えを聞きました。
「測定器に頼りすぎるな、誤差はあるものと思え。しかし器械でしか測れない放射能。
普段から測って、数値の大きな変動を見逃さないようにして、逃げろ」ということでしょうか。
広河
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